ゲームパブリッシングにおいてローカライズは誤解されがちなプロセスだ。ゲームのどの面をローカライズするときも細心の配慮で臨むことが新規市場進出の成功の鍵となる、と業界のあるベテランは語る。
Level InfiniteおよびTencentのMENA(中東・北アフリカ)統括責任者であるJohn Laceyは、ドバイで開催されたGaming Mattersに登壇し、ゲームローカライズが複雑だが必要不可欠なプロセスであることを力説した。国や地域を超えて人気を呼ぶゲームを作るには、ターゲット市場の文化、嗜好、現地事情に精通する必要があるという。
「MENA地域というとまずラクダやピラミッド、アラビア語を思い浮かべがちですが、それはローカライズで想定することのごくごく一部にすぎません。」とLaceyは解説した。真のローカリゼーションとは、ゲーム内テキストから音声、eスポーツ展開に至るまで、ゲームを構成するあらゆる要素を包括的に取り扱うプロセスだという。
「MENA地域というとまずラクダやピラミッド、アラビア語を思い浮かべがちですが、それはローカライズで想定することのごくごく一部にすぎません。」
John Lacey
Laceyによれば、ゲームの強さは各要素のローカライズがどれだけしっかりしているかで決まる。「AAAゲームがMENA地域で成功するには、ゲームのあらゆる面のローカライズを検討する必要があります。ローカライズが弱い部分があればそこで訴求力は頭打ちになってしまいます。」
モバイルファーストな開発へのシフト
LaceyのLevel Infiniteにおける役割は、AAAタイトルのローンチを成功させ、多数のモバイルタイトルを監督することだ。しかし両者の境界はモバイルテクノロジーの急速な進歩によって薄れつつあるとLaceyは指摘した。
「今ではモバイルはゲーマーが特に好むデバイスとなっています」
John Lacey
「モバイルゲームは、昔は技術面で色々と制約があったために、長らくコンソールやPCより格下に見られてきました」とLaceyは言う。
「今ではモバイルはゲーマーが特に好むデバイスとなっています。モバイルゲームの時代なのです。」彼はさらに、MENAが「現在ではモバイルファーストな市場となっている」と述べた。
Level Infiniteもモバイルファーストな開発に移行したことで、より若くテクノロジーに敏感な層へ訴求することができた。こうした若者たちは同じゲームを何年も熱心に遊び続けることも多く、大きな課金ユーザー層とみられている。MENA地域においてはこの層を中心に活発なパートナーシップとインクルーシブな文化が醸成されているという点も好ましい。
Laceyはこれから業界に参入しようとする若手開発者たちに向けて、仕事の楽しさに目を向け、創造性を光らせることが大切だとアドバイスした。「自分は仕事でとてつもなく楽しいものに携わる機会に恵まれているのだということを思い出してください。すばらしいゲームを作るための白紙のキャンバス、まっさらな土地がすぐそこにあるのです。想像力を思いきり羽ばたかせましょう。」
斬新なプロジェクトやIPに取り組む機会は、未来のヒット作に携わる機会かもしれない。これからゲーム業界を目指す若人にとっては、ビデオゲームの楽しさと可能性への情熱を保ち続けることが長い目でみれば役に立つだろう。
