Funcomはこれまでにも数々のオンライン世界を創り出してきたが、今回『デューン』を原作とした新作サバイバルMMOを開発するにあたっては、プレイヤーストーリーテリングの面で新しい試みをしている。
『Dune: Awakening』はフランク・ハーバートの連作SF小説の世界を「もしもポール・アトレイデスが存在しなかったら」という独自の視点から描く。プレイヤーは互いに手を組み、あるいは対立して、原作の主人公不在の惑星アラキスで生きることになる。
未来を予測不能にすることで、プレイヤーがこの苛酷な砂漠惑星の未来を自分たちの手で築きあげる自由を生み出すのが開発側の狙いだ。
先日ノルウェーのオスロで開催された『Dune: Awakening』プレスイベントでは、Funcomの最高プロダクト責任者兼エグゼクティブのスコット・ジュニア氏から、本作が生まれた経緯、同社の開発経験を活かしたワールド構築、デューン原作のビデオゲームとしてこれまでにない個性を持たせる試みについて聞くことができた。
新たな視点から描く「デューン」
デューン原作のビデオゲームとしてはすでに1992年の『Dune 2』や最近の『Dune: Spice Wars』といったストラテジーがあるが、『Dune: Awakening』はより挑戦的な作品となる。惑星アラキスでのサバイバル体験に焦点を置き、プレイヤーは資源を巡って互いに手を組むか争うかを迫られる。エンドゲームでは、プレイヤーが築いたギルド同士が惑星の支配権を巡って争うまでになる。
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Funcomにとって本作は『Conan Exiles』の開発経験を活かした新たな企画だが、なによりフランク・ハーバートの原作小説と齟齬のない内容にすることが至上命題だった。
「[ポール本人が]いない時間線が私たちのプロジェクトの出発点となりました。」
ジュニア氏はこう語る。「本作の企画を立ち上げる際、どういう方向性で行くか決めるため、弊社クリエイティブディレクターのジョエル・バイロスとデザインチームはまず原作をかたっぱしから読みました。そこから思いついた歴史改変アイデアを使って、デューンのオンラインサバイバルゲームを作ろうということになりました。このアイデアは、原作でポールが予知能力によって視た〈黄金の道〉とさまざまな未来の中に、ポール本人がいない時間線もあったというところからきています。これが私たちのプロジェクトの出発点となりました。」
Funcomは、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督による一連の映画化や連続テレビドラマ『Dune: Prophecy』を世に送り出したLegendary Entertainmentと提携しただけでなく、膨大な原作設定の中から他のデューン原作作品がとりあげなかった細部を掘り起こすことにも労をいとわなかった。
例えば、『Dune: Awakening』では放棄されたテラフォーミング施設が見つかることがある。アラキスの居住性を向上させようとして果たせなかった痕跡だ。本作はデューンのビデオゲーム化作品として初めて、プレイヤーがこうした場所をダンジョン感覚で探索できる。なぜ大領家らに放棄されたのかは、探索を通じて明らかになるだろう。
スカベンジャーからアラキス公爵へ
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プレイヤーはゲームを進めながら自キャラクターの能力を多種多様な形で発達させ、アラキスの中に居場所を見いだしていくことになる。レベルを上げて装備や活動拠点を作るだけでなく、各地の集落を訪れて重要なNPCに会うこともできる。その多くはキャラクターに上級能力を授けてくれるため、できることがさらに広がるだろう。
砂漠で生き抜く術を身につけ、装備や乗り物を作ってアラキスを渡り歩くだけではない。エンドゲームではデューンの政治や利権をめぐる駆け引きにさえ参加できる。一介のスカベンジャーから未来のアラキス公爵へと成り上がっていく過程は『Dune: Awakening』の醍醐味のひとつであり、エンドゲームをめざすだけでも従来のデューン原作ゲームがほとんど触れてこなかった体験を味わえるはずだ。
エンドゲームをめざすだけでも従来のデューン原作ゲームがほとんど触れてこなかった体験を味わえるはずだ。
「エンドゲームとゲーム内経済の担当チームは、オープンワールドのサバイバルゲームにふさわしい個性的な政治構造をプレイヤーが構築できるような手段を提供するため、徹底的にこだわって作業を進めてきました。」とジュニア氏は言う。
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「原作はもちろん、他のオンラインゲームではプレイヤーがどうやっているかという点も研究しています。プレイヤーのふるまいを観察するためにTwitchのゲーム配信を見たりもします。『Dune: Awakening』のエンドゲームをどういう流れにするのがいいか、参考にしたいので。」
Funcomにとって『Dune: Awakening』は、開発陣が思い描くデューン宇宙のヴィジョンを展開してみせる機会でもある。原作の独特な味わいと魅力を損なうことなく新しい方向性のストーリーを追求していくというのが第一目標で、原作ファンにとっても、本作で初めてデューン世界に触れるという人にとっても、特別な印象を残すタイトルになるだろう。
「私たちは原作の魅力をどこまでも忠実に伝えようと努力しています。そのためには常に、どんな細かな設定や描写もできるかぎり取り入れなければなりません」とジュニア氏は言う。
この姿勢は、例えば原作でホログラムを指す「ソリド プロジェクション」という用語を、本作でもそのまま使用するといったところにも現れている。本作のキャラクタークラスも、原作の設定にできるだけ沿いつつゲーマーになじみ深いプレイメカニクスを成立させるよう、注意深く設定されている。
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『Dune: Awakening』のキャラクタークラスの中には、EverQuest 2などの既存ゲームで見かけるようなものもあるが、どれもフランク・ハーバートの小説に登場してもおかしくないよう丁寧に設定を作り込まれている。
「キャラクターのアーキタイプや能力は、兵士からベネ・ゲセリットに至るまで、すべて原作の記述をもとにしています。ゲーマーにとっては見慣れたゲームプレイ概念に、デューン宇宙ならではの雰囲気を持たせるのは非常にエキサイティングな取り組みです。」
『Dune: Awakening』は現在開発中で、PC、PlayStation 5、Xbox Series X|Sでのリリースを予定している。