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Level Infiniteの舞台裏:IPに対する姿勢とコミュニティ主導型開発

今年3月、モバイルゲーム業界の人気カンファレンス「Pocket Gamer Connects San Francisco」で行われたゲーム業界関係者向けトークセッションに、Level InfiniteからYong-yi Zhu (バイスプレジデント兼ビジネスオペレーション・戦略・コンプライアンス統括)が登壇した。

このセッションでは、良いゲームを開発するうえで避けては通れない複雑さについて、Pocket Gamer ConnectsイベントコンテンツコーディネーターのCharlie Scowen氏との間で踏み込んだ議論が展開された。その中で話題にのぼったのは、ゲームにおけるコミュニティからの人材発掘や持続可能なIP (知的財産)戦略の重要性だ。開発者やパブリッシャーだけでなく、ユーザーにとっても多くの恩恵をもたらすのだという。

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IPへの協働的アプローチ

Level InfiniteがIPの取り扱いにあたって最も重視するのは「開発者と共に新しいものを創りあげる」という姿勢だ。相手がRiot GamesやEpic Gamesといった業界大手だろうと、小規模な新興スタジオだろうと、それは変わらない。

自分たちの方から開発者に会いに行き、彼らが人々の心に残るIPをめざして独自の道を切り拓くのを助け、創造性が花開き持続可能なアイデアが根付く環境を醸成する。

既存フランチャイズの拡大と新規IPの開発のバランスをとれるかどうかに成功がかかっている。前者についてはDigital Extremesをはじめとするスタジオの、すでに一定の成功をおさめたフランチャイズの拡大発展に協力することで、時代を超えてプレイヤーの心に響く作品を供給し続けられるように計らう。

後者については、市場のニッチ、オーディエンスの需要、そして開発者の意欲を正確に把握する必要がある。そうした緻密な計算に基づくアプローチでこそ、ただ目新しいだけでなくプレイヤーの心をしっかりと掴むIPを創り出すことができる。

スタジオや人材への投資

Yong-yi Zhu (Level Infiniteバイスプレジデント兼ビジネスオペレーション・戦略・コンプライアンス統括)とCharlie Scowen氏(Pocket Gamer Connectsイベントコンテンツコーディネーター)

Level InfiniteのIP戦略に欠かせないもうひとつの要素はスタジオや人材への投資だ。Yong-Yiは、各スタジオの特定ジャンルに対する長期ビジョンや意欲をLevel Infiniteがどのように評価するかについて詳しく説明した。

ソウル系一筋のフロムソフトウェアや、Divinityシリーズと共に歩み続けてきたLarian Studiosの例が示すように、特定のオーディエンスに的を絞った熱意の感じられるコンテンツを、改良を重ねつつ送り出していくことが成功につながる。

例えば『Baldur’s Gate 3』は忽然と現れてヒット作となったように思われがちですが、実際には前作『Divinity: Original Sin』や『Divinity: Original Sin II』からの長年にわたる積み上げから生まれてきた作品です。

Yong-Yiはこう語った。「例えば『Baldur’s Gate 3』は忽然と現れてヒット作となったように思われがちですが、実際には前作『Divinity: Original Sin』や『Divinity: Original Sin II』からの長年にわたる積み上げから生まれてきた作品です。Level Infiniteがスタジオを買収するときには、そのスタジオが将来的にどのジャンルで、どういうタイプのゲームを、どのようなオーディエンスにこそ届けていきたいと考えているのかをうかがいます。それがサイクルとして回せるようなら、そのスタジオにとっても私たちにとっても成功のチャンスはぐっと高くなると考えられます。」

こちらからプレイヤーに会いに行く:地域戦略とコミュニティマネジメント

Level Infiniteがゲーム業界で成果を挙げてこられたのは、幅広い市場に精通し、プラットフォームに合わせた開発を行い、コミュニティと密接な関係を築いてきたからだ。世界中のゲーマーに響くゲームづくりは、協働的イノベーションをとりいれた地域戦略によって支えられている。

Yong-yiは各地域の担当チームが現地の事情をどれだけきめ細かく汲み上げているかを具体的に説明した。例えば東南アジアでは比較的古いデバイスを使っているユーザーも多いので、それに合わせてパッケージサイズを変更している。マーケティング戦略についても文化的背景を考慮し、中東向けにはラマダンに合わせた調整を入れることもある。このように地域に合わせた調整を加えることで、どの地域のプレイヤーも「運営に認知され、他のプレイヤーと平等に扱われている」と感じられるのだ。

Level Infiniteは、PCゲームであれ、コンソールやモバイルゲームであれ、そのゲームが初めからそのプラットフォームに最適化された設計でリリースされるようにはからう。

地域に合わせた柔軟な調整に加えて、各プラットフォームの強みを活かしたゲームづくりも非常に重視している。Level Infiniteは、PCゲームであれ、コンソールやモバイルゲームであれ、そのゲームが初めからそのプラットフォームに最適化された設計でリリースされるようにはからう。こうした柔軟さがあるからこそ地域や販路を問わず幅広いプレイヤーにリーチできるのだ。

ゲームづくりに対するLevel Infiniteの基本理念としてもうひとつ欠かせないのが、協働・共創の概念だ。初期段階からコミュニティを引き入れる参加型開発を推進し、インフルエンサーとのコラボも積極的に行っている。例えばSharkmobの『EXOBORNE』では、公開・非公開のプレイテスト実施はもちろん、インフルエンサーからのフィードバックも方向性の決定に重要な役割を果たしている。このようにプレイヤーにも参加してもらいながら開発サイクルを回していけば、プレイヤーのニーズや嗜好を見失うことなく、遊ぶ人にとって心地よいなじみ深さと新鮮さを兼ね備えたゲームを生み出すことができる。

それが開発陣とプレイヤーとの間にどれほど強い絆を醸成するかは『League of Legends』や『Fortnite』といったタイトルの成功をみればよくわかる。どんなゲームにも有効な開発アプローチというわけではない点はYong-yiも認めているが、少なくとも運営型マルチプレイヤーゲームに対する効果は実証済みだ。Level Infiniteは能動的にコミュニティと関わっていくことで、傘下のゲームが世間の関心からそれることなく、新鮮さを保ち、プレイヤーの期待の変化に応えられるようにしている。

ゲームとIPの未来

Yong-yiによれば、IPは今後5年間で、デジタルエンターテイメントを複数のプラットフォームやメディアに展開するための橋渡しとして中心的な役割を果たすようになるという。すでに『League of Legends: Arcane』のようなトランスメディア・ストーリーテリングが台頭しつつある現状をみるに、プレイヤーがお気に入りのゲームに触れる機会は、今後コンソールやPCだけにとどまらず、テレビ番組や映画といった媒体にも広がることになるだろう。

そこで開発者が成功するには、IPを尊重し、目先の利益よりオーセンティシティを優先させる必要がある。

Yong-yiは没入型体験やゲーム開発効率についても言及した。ARやVR、AI駆動ツールといった新技術は膨大な可能性を秘めているが、プレイヤーからの増えつづける要望にどう応えるかが真の課題になるだろう。特にAIはコンテンツ制作に革命をもたらし、開発サイクルを加速し、開発者が洗練された斬新な体験の提供に集中できるようにしてくれるかもしれない。

このようなゲーム業界の最新情報やソートリーダーシップに興味があるなら、今後もLevel Infiniteブログをぜひチェックしていただきたい。

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